最近看護師さんから聞かれた質問

正確にはアミノレバン就寝前の処方を患者さんが夕食後に持ってきてほしいと言っているからという理由でどうやら夕食後に服用させていることが判明した時「いやーそれはまずいっすよ」と言ったら聞かれたこと。

アミノレバン就寝前服用の意義はざっくりとは理解しているつもりだったのですが「ん~たしか肝硬変の人だと...明け方の飢餓状態が...やばいからそれを防ぐため、ですよ!!(汗)」みたいなざっくりした説明しかできなかったことを悔やみ改めてちゃんと調べました。

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◆肝硬変患者の低栄養状態

低栄養状態の肝硬変患者の死亡率は高く、栄養状態の改善が必要

・低栄養の頻度
肝硬変の患者において
Child-Pugh分類Aでは45%、Bで84%、Cで95%
が低栄養状態にある

肝硬変患者の約80%はエネルギー単独、蛋白質単独もしくは両者の異常である蛋白質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition : PEM)を呈しているといわれる。

・原因
①肝硬変では正常な肝細胞が減少
→グリコーゲンの蓄積が少なくなる
→糖質の原料が少ない状態
②肝硬変では早期からインスリン抵抗性が出現
これらによりエネルギー源として糖質を利用することができる比率が非常に低下している
肝硬変患者では早朝空腹時には健常人が2~3日絶食したのに相当する飢餓状態に陥ると考えられている

・低栄養状態だと
門脈圧亢進症、腹水、肝腎症候群などの合併症↑↑
入院中の死亡率 2倍
入院期間も長くなり、コストもかかる
肝硬変の低栄養状態には速やかな対応が必要

そこで...
LES(late evening snack)
就寝前に軽食を摂取することにより早朝までの絶食時間を短縮し睡眠中の飢餓状態を改善する栄養療法

・条件
①約200kcal(アミノレバン:210kcal/包、おにぎり1個など)
②炭水化物・脂質・蛋白質をバランスよく含む
③BCAAを多く含む
④消化が良い
など

・効果
投与期間1週間でエネルギー代謝(呼吸商)、血中遊離脂肪酸、尿中3メチルヒスチジンの改善
投与期間3か月で血清アルブミン、窒素バランス、身体計測、生活の質の改善
が報告されている。
※アルブミン:肝硬変患者において血清アルブミン値3.5g/dL以上では3.5g/dL未満の症例と比較して有意に予後が改善していることが報告されている

全生存率への効果はいまだ明らかではない。
(難治性腹水を伴う高度の肝機能低下においてLESが生存率向上に寄与しているとの報告がみられるが、比較的肝機能が良好な肝硬変への効果はないとも)

・肝硬変ガイドラインでは
LESによる肝硬変の予後については明らかではないが、エネルギー代謝やQOLを改善するので行うよう提案されている。

◆参考文献
肝硬変診療ガイドライン
佐々木茂ら(2013)「BCAA顆粒製剤投与時におけるLES(late evening snack)としてのアミノレバン®ENの効果」Frontiers in Gastroenterology 18(2) : 178-181
高塚亮ら(2014)「消化器内科処方を服用中の早朝倦怠感」月刊薬事