吃逆(しゃっくり)
横隔膜の収縮による吸気運動と声門閉鎖筋群の収縮が一定パターンをもって同期的に起こる協調運動

◆分類
吃逆発作:48時間以内に収まる
持続性吃逆:48時間~1か月程継続する
難治性吃逆:1か月以上持続する

持続性・難治性吃逆では不眠、経口摂取の低下による脱水や体重減少、不安・うつなど患者のQOL低下の要因となることが報告されている。

◆がん患者における吃逆
・がん患者の吃逆発生率:1~9%
・特にプラチナ系抗がん剤含有のレジメンにおいて発生率が高くなる。
(シスプラチンでは1.4~68%と高頻度に合併、そのうち30%で夜間の不眠を伴うとの報告も)
・比較的初期に症状が発生する
デキサメタゾンも被疑薬として挙げられる
→次コースでメチルプレドニゾロンに変更することで吃逆が減少したとの報告あり

★シスプラチンでしゃっくりが起こる機序
シスプラチンが腸クロム親和性細胞を刺激してセロトニン分泌を亢進し強心性の腹部迷走神経を活性化する。そして延髄にある吃逆中枢を刺激して吃逆を誘発すると考えられている。
★デキサメタゾンでしゃっくりが起こる機序
血液脳関門により脳への移行性が悪いとされているが高用量では脳内に移行し、視床下部の海馬にあるステロイド受容体を活性化する。これにより吃逆反射弓の遠心路を刺激するとされている。

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治療薬
クロルプロマジン(コントミン)
50~60mg/day
吃逆に対して唯一適応がある薬
ドパミン受容体拮抗作用によるGABA系神経の賦活作用による
副作用:錐体外路症状、中枢神経抑制

バクロフェン(ギャバロン)
5~60mg/day
抗痙攣薬:GABAB受容体のアゴニスト
持続性・難治性吃逆への効果が示されている。
副作用:傾眠、めまい

メトクロプラミド(プリンペラン)
10~40mg/day
消化管運動賦活薬
末梢性の胃腸機能改善による効果と考えられている
胃膨満が原因の場合に
副作用:錐体外路症状

ガバペンチン(ガバペン)
中枢神経系吃逆の場合
横隔膜の興奮性を調整して、持続性・難治性の吃逆に効果を示すことが示唆されている。

プレガバリン(リリカ)
同様の薬理作用を有するガバペンチンが無効の症例に有効であったとの報告あり。

芍薬甘草湯
呉茱萸湯

7.5g/day
持続性・難治性吃逆に対して効果が示されている。

柿のヘタ煎
院内製剤。古くから伝わる吃逆治療薬

参考文献
野村久祥編(2018)「がん薬物療法の「スキマ」な副作用」月刊薬事 Vol.60 No. 6
中西京子ほか(2017)「肺癌化学療法中の持続性吃逆にプレガバリンが有効であった1例」癌と化学療法 44(1): 63-65
藤原豊博(2013)「化学療法による吃逆」月刊薬事 55(6)