NSAIDs経口剤の副作用として消化性潰瘍が有名ですが、貼付剤でも潰瘍を惹起しうるのでしょうか?
sippu
貼付剤
経皮吸収型製剤
一般的に言われる利点
初回通過効果を回避できるため薬のバイオアベイラビリティを高められる。
経皮からの吸収により消化器系の副作用を回避して、全身性の副作用を軽減させることに繋がる。
経口薬に比べて安定した血中濃度が得られる。
投与を中止したいときに容易。

薬物動態
ケトプロフェン
ケトプロフェン20mg含有貼付剤8枚を一度に貼付した場合のAUC
→18209±962 ng・hr/mL
ケトプロフェン150mg含有経口薬(標準的な1日投与量)単回投与時のAUC
→25170±2120 ng・hr/mL
でありおおむね同等と推察される。

ケトプロフェン20mg含有貼付剤と150mg含有経口薬
組織中ケトプロフェン濃度は同等
血漿中ケトプロフェン濃度は貼付剤は経口薬群の1/17
であったとの報告あり。

ジクロフェナク
15mg含有貼付剤を8枚貼付した際のAUC≒25mg含有経口薬単回投与後のAUC

NSAIDs貼付剤の副作用発生状況
2015年NSAIDs貼付剤の総処方量 4,820,224,437枚
2015年PMDAが収集・公開している医薬品副作用データベース(JADER)に報告された副作用
49,249症例のうちNSAIDs外用剤が被疑薬として挙げられたもの:34症例(0.07%)
・内訳
3例 アナフィラキシーショック
2例 アナフィラキシー反応、脳血管障害、接触性皮膚炎、間質性肺炎、皮膚粘膜眼症候群、肺炎、間質性腎炎
1例 貧血、腹水、アスピリン喘息、脳出血、薬疹、胃潰瘍胃潰瘍出血、アレルギー、イレウス、炎症、肝障害、胸水、蛋白尿など

→消化性潰瘍は2例ほど(0.004%)

まとめ
割合としては少ないですがNSAIDs貼付剤でも消化性潰瘍の報告はあります。血中濃度の経口薬との比較を考慮すると1枚貼っただけではそこまで影響がなさそうですが、たくさん貼ると経口薬と同等の血中濃度を示すほどにもなるため、湿布だからといって貼りすぎには注意が必要と考えられます。

◆参考
大谷道輝「NSAIDs含有貼付剤を処方する際の注意点を教えてください」Locomotive Pain Frontier 4(1): 21-23, 2015
田中博之「NSAIDs貼付剤の2015年度における処方量と副作用の発生状況の調査」応用薬理 94(1/2): 27-32, 2018