最近、DPP-4阻害薬で体重が増えるという報告があることを知ったので少し調べてみました。
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◆体重が増えるという報告の例
・体重への影響:24週におけるベースラインからの体重の変化量はルセフィ先行群で-2.3kg、シタグリプチン先行群で+1.4kgだった(1)
・(シダクリプチン)3分の1の症例において6ヶ月目以降に1kg以上の体重増加が観察され、特にHbA1c再上昇群においては6ヶ月目以降の有意の体重増加を認めている(2)

 ◆機序
Glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)を介した脂肪合成促進作用による影響が考えられている

インクレチン:インスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称(インクレチンによるインスリン促進作用は糖負荷後の総インスリン分泌の約50%と言われており食後の血糖維持に大きく関与している)。食物中の栄養素(グルコースや脂質)に反応して分泌される。
GLP1(小腸下部から分泌)+GIP(小腸上部から分泌)
→DPP-4で速やかに分解

DPP-4阻害薬=両者の血中濃度を保つことで食後の血糖を低下させる

GLP1→
膵臓:血糖依存的インスリン分泌促進
消化管:胃排泄遅延作用
脳:食欲抑制作用

GIP→
膵臓:血糖依存的インスリン分泌促進、グルカゴン分泌促進作用(主に低血糖時、高血糖時は抑制)
脂肪細胞:脂肪蓄積
骨芽細胞:Ca蓄積
脂肪細胞に直接働いてグルコースや脂肪酸の取り込みを促進し、脂肪を蓄積する。

・インスリン抵抗性を惹起させる可能性も危惧されている
GIP受容体欠損マウス→高脂肪を付加しても肥満にならなかった
GIP受容体拮抗薬→食事誘導性肥満マウスの体重を減少させた

◆感想
大幅に体重が増加するというわけではなく、GLP1による食欲抑制作用も亢進することを考えるとそこまで気にすることではないのかもしれませんが、頭の片隅に置いておくとなにかの役に立つことがあるかもしれませんね。

◆参考文献
(1)ルセオグリフロジン及びシタグリプチンの投与順の比較試験 Takihata M.,et al.: Expert Opinion. Pharmacother. 2019
(2)田尻祐司ほか(2014)「DPP-4阻害薬シダクリプチンの長期的効果と安全性に関する報告」糖尿病 57巻7号
・「インクレチンとは」DPP4阻害薬ジャヌビア MSD connect