Q
ナウゼリン(ドンペリドン)の添付文書には
「外国において本剤による重篤な心室性不整脈及び突然死が報告されている」
との記載があります。

ドンペリドンは制吐剤としてよく使用されていますが、突然死とはどのようなものなのでしょうか。
また、同効薬であるプリンペラン(メトクロプラミド)ではどうなのでしょう。 

A
ドンペリドンは神経節遮断剤に共通するQT延長作用があり、心室頻拍から致死性不整脈であるTorsades de pointesを生じうる。添付文書には記載がないが、メトクロプラミドも同機序で突然死が生じうる。 

◆報告例
・Chenら 2)
調整オッズ比でみると、心室性不整脈はドンペリドンの常用量で約5割増、常用量超では約2倍となる。突然死は常用量で7割増、常用量超では約2倍であった。 

・Aranaら 3)
ドンペリドンとメトクロプラミド両剤で心臓突然死のリスク増が認められ、特にメトクロプラミドで著名であった。メトクロプラミド使用による心臓突然死のリスク(調整オッズ比)は4.3であった。

・ドンペリドンを使用しても有意なQT延長、突然死を認めなかったとの報告もある。4)

◆リスク要因
ドンペリドンの内服量が1日30mgを超える場合、60歳を超える高齢者、重篤な肝疾患、心疾患のある患者、QT延長作用やCYP3A4阻害薬を併用の場合に稀ではあるが心室性不整脈や突然死のリスクが指摘されている。4)

◆まとめ
 「ドンペリドンは有効性を示す用量では効果に不釣り合いなほど致死性不整脈と突然死の危険性があり使うべきではない」1)

と文献ではまとめられていますが、ドンペリドンの効果は本当に不釣り合いなのでしょうか。

日本緩和医療学会のガイドラインでは
「がん患者の悪心嘔吐に対して、ドンペリドンの治療効果はエビデンスが不足しており、有害事象についてはがん患者では評価されておらず、想定される益(悪心嘔吐に関する治療効果)と害(心臓突然死を含む重篤な有害事象)の差について判断できない」4)
(メトクロプラミドによる想定される益は害を上回っており、メトクロプラミドの投与はがん患者の悪心嘔吐を緩和させる可能性がある4))

とされています。効果に関してはなんとも言えないという感じですかね。たしかに上記記載に則れば不釣り合いと言われても仕方がないのかもしれません。

どちらにせよ吐き気が治っているのに長期間doで継続されている例やトラムセットの副作用予防で合わせて1日4回投与されている例+それが延々と併用されている例などをたまに見るため、そういった不要不急と思われる例では上述したリスクやその他錐体外路症状など副作用リスクを考慮して漫然と投与するべきではないでしょう。

とりあえず下記推奨が分かりやすくて良いと思います。
・2014年欧州医薬品庁
→ドンペリドンは投与量を内服薬は1回10mg1日3回まで、座薬は1回30mg1日2回まで、通常は1週間を超えない投薬とし、中等度以上の肝障害、心臓の電気的活動異常や不整脈がある場合は投薬を避けるように推奨

◆参考文献
(1)薬のチェックTIP編集委員会「吐き気止めのドンペリドンとメトクロプラミド 致死性不整脈と心臓突然死の害」薬のチェックTIP 17(70): 39-41, 2017
(2)Chen HL et al. "Domperidone, cytochrome P450 3A4 isozyme inhibitors and ventricular arrhythmia: a nationwide case-crossover study " Pharmacoepidemiol Drug Saf 2015; 24(8): 841-848
(3)Arana A et al. "Risk of out of hospital sudden cardiac death in users of donperidone, proton pump inhibitors, or metoclopramide: a population based nested case control study" Drug Saf 2015; 38(12): 1187-99
(4)日本緩和医療学会「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2017年版」